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32GBのIntel Mac miniで「35B級MoE」ローカルLLMは動くか — CPUだけで4モデル実測

TechOllamaOllamaMoEローカルLLMMacMini2026/07/27

32GBのIntel Mac miniで「35B級MoE」ローカルLLMは動くか — CPUだけで4モデル実測

結論(先に)

  • 35B級のMoEモデルも、32GBのIntel Mac mini(GPUオフロードなし=100% CPU推論)に収まって動く。 速度は 4.8〜6.8 tok/s。人の読み取り速度(約5〜7 tok/s)に近い速度域。
  • MoEは"でかいのに速い"。 gemma4:26b(MoE)は 6.6 tok/sで、同じ系列の gemma4:12b(dense)の 2.7 tok/s約2.4倍。総パラメータは26B > 12Bなのに、MoEのほうが速い。
  • ただし「速い=使える」ではない。 速度1位の gpt-oss:20b は日本語タスクで素直に答えず、最遅の qwen3.6:35b は中国語の文字が混じる。今回のテストで日本語品質が最もクリーンだったのは gemma4:26b(速度6.6)だった。

検証のきっかけ

よく聞かれるのが「結局、自分のマシンで動くんですか?」という問いです。2026年に入って登場した MoE(Mixture-of-Experts/専門家混合) モデルが、この状況を変えつつあります。総パラメータは20〜35Bと大きくても、1トークンを生成するたびに実際に動くパラメータ数は3〜4Bだけ、という構造です。

MoEの仕組み。全エキスパートをメモリに載せる(gemma4:26bなら総26B=約17GB)が、1トークンごとに発火するのはルーターが選んだ一部のエキスパート(約3.8B)だけ。これが「大きく載せて、小さく動かす」の正体。図のエキスパート数は説明用。

「アクティブが3〜4Bなら、3B級の速度(前回の実測で10 tok/s前後)が出るのでは?」と考えていました。本当にそうなるのか、GPUオフロードの効かないIntel Mac miniで確かめました(Intel内蔵GPUはOllamaが使わないため、推論は100% CPU)。Apple Siliconなら話は早い(GPUが効く)のですが、あえて条件の厳しいCPU推論で「どこまで実用か」を見るためです。

検証環境

項目
マシンIntel Mac mini(2018モデル相当)
CPUIntel Core i5-8500B @ 3.0GHz / 6コア6スレッド
メモリ32GB
GPUなし(Ollamaのオフロード対象外=100% CPU推論)
OSmacOS 15.7.7
ランタイムOllama 0.30.7

補足:Intel MacでのOllamaは brew install ollama の本体だけだと推論エンジン(llama-server)が同梱されず、pull は通っても生成が500エラーになります。公式配布版(Ollama.app に同梱)を使うのが回避策です。

bash
cd ~ && curl -fL -o Ollama-darwin.zip https://ollama.com/download/Ollama-darwin.zip
unzip -o -q Ollama-darwin.zip -d ~/ollama-app
~/ollama-app/Ollama.app/Contents/Resources/ollama serve &

計測方法(再現用)

REST APIの eval_count(生成トークン数)と eval_duration(生成所要ナノ秒)から tok/s = eval_count / (eval_duration / 1e9) を計算します。ollama run のverbose表示より安定します。

bash
curl -s http://localhost:11434/api/generate -d '{
  "model": "gemma4:26b",
  "prompt": "あなたは社内の業務アシスタントです。…(日本語の指示)",
  "stream": false,
  "options": { "num_predict": 200, "seed": 42 }
}'

ピークメモリと演算先(CPU/GPU)は、生成中に ollama ps で確認します。

結果

モデル種別生成速度ピークメモリ演算初回ロード
gpt-oss:20bMoE ~20B / アクティブ3.6B6.8 tok/s13 GB100% CPU21.3s
gemma4:26bMoE 26B / アクティブ3.8B6.6 tok/s17 GB100% CPU39.9s
qwen3.6:35bMoE 35B / アクティブ3B4.8 tok/s23 GB100% CPU48.3s
gemma4:12bdense 12B(対比用)2.7 tok/s8.9 GB100% CPU13.7s

参考までに、前回同じマシンで測ったdenseモデルの素の速度は llama3.2:3b=10.5 / gemma2:9b=4.1 / qwen2.5:14b=2.3 tok/s でした。

Intel Mac mini(32GB・CPUのみ)での4モデルの生成速度。青がMoE 3本、グレーがdense 12B。MoEの gemma4:26b は同系列の dense gemma4:12b の約2.4倍速い。棒の中の数値は推論時のピークメモリ。

発見1:メモリ使用量

4本ともピークメモリは 8.9〜23GB で、計測時はいずれも32GB内に収まりました。最大の qwen3.6:35b でも23GB。これは8GB機では物理的に不可能な領域です。32GBなら20〜35Bクラスも載りますが、8GBでは選択肢に入りませんでした。

各モデルの推論時ピークメモリ。赤い破線が8GB機の上限で、4本すべてがこれを超える(=8GBには載らない)。右端の32GBには全モデルが収まる。青がMoE、グレーがdense。

発見2:速度(MoEと同門dense比較)

同じGemma 4系列で比べると:

  • gemma4:26b(MoE・実際に発火するのは3.8B)→ 6.6 tok/s
  • gemma4:12b(dense・12B全部が発火)→ 2.7 tok/s

総パラメータは 26B > 12B。普通なら「大きいほうが遅い」はずが、MoEのほうが約2.4倍速い。生成のたびに動くのが3.8Bだけだからです。「大きく積んで、小さく動かす」は、GPUのないCPUマシンでも成立します。

発見3:速度の上限

一方で、当初の期待は外れました。アクティブ3〜4Bなのでdenseの3B級(10 tok/s前後)が出ると踏んでいましたが、実測は 4.8〜6.8 tok/s。むしろdenseの9B(4.1)寄りです。

CPU推論では、発火するのが3〜4Bでも、全エキスパートをメモリ上に持ち、トークンごとにどのエキスパートを使うか選ぶ(ルーティング)コストが乗ります。GPUのような並列メモリ帯域がない分、ここが効いてきます。MoEの利得は部分的に効く。「載る・denseより速い」は本当ですが、「劇的に速い」とまでは言えません。

発見4:思考モデルの挙動

qwen3.6gpt-ossreasoning(思考)モデルです。生成を num_predict: 200 に絞ると、200トークンを全部「思考(thinking)」に使い切り、最終回答(response)が空のまま打ち切られました(done_reason: length)。

速度の数値自体は200トークンを実際に生成しているので有効です。ただし日本語の回答を得たいなら、思考を切る(think: false)か、トークン上限を増やす必要があります。最新モデルをデフォルト設定のまま使うと、答えではなく思考過程だけが返ってくることがある、というのは2026年のローカルLLMで注意しておきたい挙動です。

発見5:日本語品質

思考を切って回答本文を取り直すと、速度と日本語品質の順位は一致しませんでした。

  • gemma4:26b(◎):自然で構造化された日本語。利点・注意点を過不足なく列挙。例:「機密情報の保護:データを外部に送信せず社内サーバー内で完結するため、設計図や製造ノウハウの流出リスクを最小限に抑えられます」。
  • gemma4:12b(◎):dense 12Bでも日本語はクリーン。
  • qwen3.6:35b(○):内容は濃いが、中国語の簡体字・異体字が混入(「データ主权」「取舍」「論理推問」など)。社外に出すには校正が要る。
  • gpt-oss:20b(△):思考を切っても回答せず思考のみ、しかも英語。日本語タスクに素直に出すには追加の作り込みが必要。

皮肉なことに、生成速度1位の gpt-oss は日本語で答えず、最遅の qwen3.6 は中国語が混じる。速度の数字だけで選ぶと外す好例です。

実際の出力(抜粋)

同一プロンプト「製造業の中小企業がローカルLLMを導入する利点と注意点を日本語の箇条書きで5つ」で取得した結果。

gemma4:26b(◎) — 構造化された自然な日本語:

機密情報の保護: データを外部(クラウド)に送信せず社内サーバー内で完結するため、設計図や製造ノウハウなどの流出リスクを最小限に抑えられます。

gemma4:12b(◎) — dense 12Bでも同様にクリーン:

機密情報の保護: 設計図面、製造ノウハウ、顧客情報などの機密データを外部サーバーに送信せずに処理できるため、情報漏洩リスクを低減できます。

qwen3.6:35b(○) — 内容は濃いが中国語の文字が混入:

データ主权を完全に自社で管理できます/モデルサイズの取舍/複雑な論理推問ではクラウド型LLMに比べて性能が劣る

gpt-oss:20b(△)num_predict=500 でも回答(response)は空。思考(thinking)のみ英語で完結:

(response_len=0 / thinking_len=1257。最終回答なし)

4モデル比較サマリ

モデル速度メモリ日本語出力の観察
gemma4:26b6.6 tok/s17GB◎ 構造化された自然な日本語
gpt-oss:20b6.8 tok/s13GB△ 日本語で回答せず思考のみ(英語)
qwen3.6:35b4.8 tok/s23GB○ 内容は濃いが中国語の文字が混入
gemma4:12b2.7 tok/s8.9GB◎ クリーンな日本語

参考:人が日本語を読む速度の目安は約7〜10文字/秒(≒tok/s)。6 tok/s台はその手前で、ストリーミング対話に使える範囲。

このデータで分かったこと

観察モデル根拠
速度×日本語品質のバランスが最もよかったgemma4:26b6.6 tok/s・中国語混入なし・思考ループなし
最速・最軽量。ただし日本語タスクは要調整gpt-oss:20b6.8 tok/s・13GB・日本語で回答せず思考のみ
最大級(35B)が32GBに載ることを確認。日本語は校正前提qwen3.6:35b23GB使用・中国語混入あり
日本語品質はクリーン。速度は2.7 tok/sでバッチ処理寄りgemma4:12bdense 12B・8.9GB

まとめ

  • 32GBのIntel Mac mini(CPUのみ)で、35B級のMoEも4.8〜6.8 tok/sで動く。 人の読み取り速度(約7〜10文字/秒)に近い速度域。
  • MoEは同門denseより速い(gemma4で約2.4倍)。「大きく積んで小さく動かす」はCPUでも成立する。
  • ただし「アクティブ3B=3B並みの速度」とはいかないし、速い=使えるでもない。今回のテストでは日本語品質が最もクリーンだったのはgemma4:26bだった。
  • OllamaとこのRESTコマンドがあれば、32GBのIntel Macでも動く。

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